【完全版】ハイブリッドターフ(ハイブリッド芝)とは?特徴・メリット・デメリットを徹底解説!

グラウンズパーソン

はじめに

近年、Jリーグのスタジアムにも近年導入があった「ハイブリッドターフ」。プレミアリーグではすでにほぼすべてのクラブが採用しているこの最新技術は、どんな特徴があるのでしょうか?

この記事では、ハイブリッドターフの基本知識から、メリット・デメリット、3つの種類、導入事例まで網羅的に解説します。さらに、天然芝・完全人工芝との比較や、よくある質問(FAQ)にも答えています!


ハイブリッドターフとは?【基礎知識】

ハイブリッドターフとは、天然芝と人工芝繊維を組み合わせたハイブリッド型のピッチを指します。

天然芝の風合いやプレー感覚を保ちながら、人工芝の耐久性を加えることで、
「剥がれにくさ」「耐久性」「滑りにくさ」などを向上させた次世代型のグラウンドシステムです。

ポイントは、

  • 天然芝の割合が圧倒的に多い
  • 人工芝繊維は5%以内(Jリーグ規定)

つまり、見た目も感触もほぼ天然芝
しかしその裏では、人工芝による補強がなされているため、タフなコンディションにも耐えうるのです。


ハイブリッドターフの種類【3タイプ】

ハイブリッドターフには大きく分けて3種類の施工方法があります。

1. 打ち込み式(ステッチタイプ)

特徴

  • 天然芝の地面に、18cmの人工芝繊維を打ち込む
  • 地表に約20mm(2cm)程度、人工芝繊維が顔を出す
  • プレミアリーグでは20〜30mm基準が存在

メリット

  • 最も耐久性が高い
  • 芝の剥がれ防止効果が強力

デメリット

  • 導入に1〜2週間かかる
  • コストが高め

主な採用例
エミレーツスタジアム(アーセナル)/オールド・トラフォード(マンチェスター・ユナイテッド)など


2. カーペットタイプ

特徴

  • 人工芝を地面に敷き、その上に砂と種を撒く
  • 地表に約20mm程度、人工芝繊維が露出

メリット

  • 一晩で設置できるスピード施工
  • イベント後のリカバリーにも強い

デメリット

  • 耐久性はステッチタイプに劣る
  • 寿命は3〜5年程度と短め

主な採用例
トッテナム・ホットスパースタジアム/カンプ・ノウ(バルセロナ)/ヨハン・クライフ・アレーナ(アヤックス)、ウェンブリー・スタジアム


3. 人工芝繊維補強式(エアファイバー等)

特徴

  • 地下にマイクロファイバー素材を敷設
  • 地表には人工芝が露出せず、見た目は完全天然芝

メリット

  • クッション性と保水性の向上
  • 選手への負担軽減(ケガリスク低減)

デメリット

  • 若干耐久性は劣る
  • 地面の排水設計に注意が必要

主な採用例
スタッド・ヴェロドローム(マルセイユ)/グルパマ・スタジアム(リヨン)ほか、EURO2016の半数以上の会場


ハイブリッドターフのメリット【5選】

1. 芝生の剥がれにくさが格段に向上

天然芝と人工芝繊維が絡み合うことで、
ターン時やコンタクトプレー時の剥がれが大幅に軽減されます。

特に、ラグビーW杯のような大規模イベントでも効果を発揮しました。


2. 多用途スタジアムに最適

サッカー、ラグビー、コンサートなど、異なる用途によるダメージにも強く、
スタジアムの収益化を支援します。

(※ただし、重機や設営物による「重量ダメージ」には限界あり)


3. クッション性向上で選手を守る

特に人工芝繊維補強式の場合、コルク素材によるクッション性が強化。
着地時の衝撃吸収性が向上し、選手の負担軽減・ケガリスク低減にも寄与します。


4. 滑りにくさの向上

人工芝繊維がスパイクをロックするため、滑りづらくなり、
選手の安定したプレーが可能になります。


5. 保水性アップで管理コスト削減(エアファイバー等)

コルク材が水分を保持しやすくなることで、
散水の頻度を減らし、肥料の流出を防ぐ効果もあります。


ハイブリッドターフのデメリット【注意点】

1. 初期・維持コストが高額

施工費用だけでなく、数年ごとのリニューアル(撤去・産廃費用含む)も必要です。
ROI(投資対効果)をしっかり精査する必要があります。


2. 芝生の長さ調節が困難

ステッチ・カーペットタイプでは、人工芝繊維の長さ(通常2cm)が基準となり、
天然芝の長さ調整に制限が出ます。

日本では、オーバーシーディング(冬芝+夏芝の切替)のため、春先に芝丈を短くする必要があり、
この点が導入障壁となる場合も。


3. 散水量・施肥量が増加(ステッチ・カーペット)

排水性向上の裏返しで、

  • 散水回数が増加
  • 肥料流亡による施肥回数増加

といった管理コストアップリスクがあります。


4. 冬場の「凍結リスク」

エアファイバー型では、保水性が高すぎるため、
冬季に凍結→スパイクが刺さらない現象が起きるリスクも報告されています。


5. 表面が硬くなるリスク(議論あり)

一部では、表面硬化により筋肉系のケガが増加した可能性が指摘されています。
ただし、確固たる科学的エビデンスは現時点では存在せず、
プレーの質の向上とケガ予防のバランスを取る管理が求められます。


【最新情報】ハイブリッドターフの世界動向

  • プレミアリーグではほぼ全スタジアム導入済
  • ラ・リーガ、セリエA、リーグ・アンでも導入進行中
  • 2026年W杯(米・加・墨)スタジアムでも導入予定

さらにFIFAは、2025年以降「ピッチの国際基準」にハイブリッドターフを正式認可する方向で動いています。
これは、世界中のスタジアム改修にハイブリッドターフがスタンダードになる兆しとも言えるでしょう。


まとめ|ハイブリッドターフは未来のスタンダードへ

ハイブリッドターフは、単なる技術革新ではありません。
プレーの質、選手の安全性、スタジアム収益化、環境負荷軽減
あらゆる面で未来型スポーツビジネスを支える存在になりつつあります。

しかし、その導入には慎重なコスト試算と、
日本特有の気候・管理技術に合わせた最適な運用が不可欠です。

今後、より多くのJリーグクラブや大型スタジアムが、
「自らのフィロソフィーに合ったハイブリッドターフ」を選択し、進化していくことが期待されています。


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【FAQ】ハイブリッドターフに関するよくある質問

Q1. ハイブリッドターフは天然芝と何が違うのですか?

ハイブリッドターフは、天然芝に耐久性向上のためごく少量(Jリーグ規定5%以下)の人工芝繊維を混ぜたものです。見た目・プレー感覚はほぼ天然芝と同様ですが、耐久性やメンテナンス性が向上します。

Q2. どのくらいの頻度で張替えが必要ですか?

工法によりますが、一般的には5-10年ごとの更新が推奨されています。ステッチタイプは比較的長寿命、カーペットタイプは短めです。

ただし天然芝の身を剥ぎ取ることもできるので、ステッチタイプは推奨機関よりもかなり長く使用されています。

反対にカーペットタイプの場合は、天然芝のみを剝ぎ取ることは困難なため、リノベーションの度にハイブリッドターフも交換となるところが多いです。

Q3. 選手にとってケガのリスクは高くなりますか?

正しく管理されたハイブリッドターフは、むしろケガリスクを減少させるとする研究もあります。ただし、過度な乾燥や硬化を防ぐ管理が重要です。

Q4. 日本国内で導入事例はありますか?

ヴィッセル神戸(ノエビアスタジアム神戸)、日産スタジアム(横浜)、味の素スタジアム(東京)などで過去もしくは現在導入例があります。


【比較表】ハイブリッドターフ vs 天然芝 vs 完全人工芝

項目ハイブリッドターフ天然芝完全人工芝
耐久性高い中(荒天に弱い)非常に高い
クッション性(タイプによる)高い低め(最新型は改善)
メンテナンス頻度高い(定期的リノベーション必要)高い(管理コスト大)低い(定期ブラッシング)
イニシャルコスト高い高い
ランニングコスト中(施肥・散水要)低い
プレー感天然芝に近い天然芝そのもの異なる
環境負荷中(産廃処理あり)低い高い(マイクロプラ問題)

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